【全国のまごころストーリーVol.7】
「捨てる」から「つなげる」へ。
物と人の関係性から生まれる、
新しい豊かさ。【後編】

2022/12/02

まごころストーリー

【全国のまごころストーリーVol.7】「捨てる」から「つなげる」へ。 物と人の関係性から生まれる、新しい豊かさ。【後編】

あなたの家には、「いらないもの」はありませんか?
家具、家電、食器など、そろそろ捨てようと思っていたものがいくつかあるのではないでしょうか。

 

今回お話をうかがったのは、まごころサポート 藤沢十色店の代表・松野幸弘さんと実務責任者の逵 春美 (つじ はるみ)さんです。

 

長年不用品回収の仕事に携わり、株式会社十色として不用品に関するコンサルティングにも携わっている松野さん。今後は不用品を介してシニアの方々に貢献したいと、今年まごころサポートをスタートされました。

 

不用品回収を通じて、お二人はどんなふうにシニアの方々と関わっていらっしゃるのでしょうか。「捨てる」から「つなげる」へ……そこから生まれる新しい豊かさについて、お話をうかがいました。

物を整理するには、心の整理が必要

ーまごころサポートを通して、不用品回収の依頼はあったのでしょうか?

松野実は、まごころサポートの挨拶回り1軒目で、いきなり片付けの依頼があったんですよ。チャイムを押すと足の不自由な女性が出てきてくださって、案内をしたら「母の部屋の片付けをしたいと思ってるんだけど頼める?」と。

ーへえ! すごいですね。

まごころサポート 藤沢十色店の代表・松野幸弘さん

松野いきなり片付けが当たったので、やっぱり僕たちの仕事とまごころサポートは相性がいいんだなと確信しました。そのときは衣類の片付けがメインだったのですが、僕たちは古着回収も行っているのですべて買い取らせていただきました。まさに僕たちの専門分野なので、速いし丁寧だし、片付けている最中にタンスの中からタンス預金まで出てきて、お客様はとても喜ばれていましたね(笑)。

ーシニアの方からのご依頼では、衣類以外にはどういうものが多いですか?

松野:本や食器など、重たいものが多いですね。よくあるのは、押し入れの中に季節家電をしまったままになっているとか。「もう使わないんです」と言われたものでも、アンティークのストーブなら、引き取ってピカピカに磨けば1、2万円で売れたりするんですよ。

回収した食器を梱包する様子

ーへえー! 

松野あとは、「施設に入るから家の中のものを全部片付けてほしい」とか、息子さん達からお話をもらうことが多いです。この前は、あるおばあちゃんのご親族からご依頼がありました。おばあちゃんが物を溜め込んでゴミ屋敷のようになってしまっているから、大家さんから苦情が来ていると。

ーということは、持ち主が手放したくないパターンなんでしょうか。

松野そうなんです。現地に行って片付けをする際、ご親族の方がおばあちゃんを外に連れ出してくださったんですけど、15分くらいしたらおばあちゃんだけ戻ってこられて。僕の隣に座って、「これは捨てないで」と仕分けしていくんですね。すると親族の方が僕らに気遣ってくださって、「そんなの捨てちゃいなさいよ」って催促する。しまいには、お二人がケンカになってしまって。

ーわあ、そんなことが。

松野:このように自分が買ったもの、溜めてきたものを「捨てたくない」というシニアの方は、多くいらっしゃます。おそらく、「物を大事にしなさい」と育てられた時代背景もあるんでしょうね。そういうときって無理に引き離すよりも、その気持ちに寄り添った方がうまくいくんです。

そのおばあちゃんともきちんとお話をしていると、残したいものの共通点が見えてきました。昔の写真や、趣味の歌関連のもの……「これはいるんじゃないですか?」と相談し続けるうちに、「あとは任せるわ」とおばあちゃんが言ってくれたんです。実はその日は多くのものを引き取らずに帰ったのですが、後日再度依頼を受けて片付けに入ったときは「全部引き取っていいよ」とおっしゃり、ご自身は別の場所で待機し、作業はスムーズに完了させることができました

ーすごい。信頼してもらえたんですね。

松野物を整理するには、心の整理が必要なんです。物にはそれぞれの思い出がくっついているから、無理に引き離すように持っていくと、のちのち心残りになる。だから、持ち主の心に寄り添うことが大切なんですよね。そうすると、少しずつ心の整理ができて、物を手放すことができる。みなさん最後には「スッキリしました」とおっしゃいますよ。

ー捨てられないと確かに周りはヤキモキしてしまいますが、「物に思い出がくっついている」って素敵なことのように感じます。

松野そうなんです。そのおばあちゃんも、少し痴呆が進んでいらっしゃったんですけど、物をひとつ手に取るごとに「これはいつどこで買ったもので」「これは仕事でもらったもので」とか、いろんな思い出を話してくれました。物とともに、手に入れた当時の記憶が残っているんですね。それは素敵なことだなと思います。

「豊かさ」とは、「思い入れを持つ」こと

ゴミ拾い活動を行う松野さんと逵さん

ーこのお仕事をする中で、松野さんの中で「豊かさ」についての考え方に変化はありましたか?

松野:今のエピソードのように、「豊かさ」とはただ「物を持つ」ことではなく、その物に対して人が「思い入れを持つ」ことなんだと思うようになりましたね。そして、ひとつの物を大切に長く使うには、人の手が必要なんだと改めて思いました。

大事にメンテナンスしながら物を使っていくのは、インターネットやAIでは到達できないことです。僕はそんなふうに、「人」と「物」の関係性を大事にしたい。それが、人にしかできない価値のある仕事につながると思うし、そこに「豊かさ」があるのではないか、と思っています。

ー逵さんはいかがでしょうか。

私は不用品回収の仕事を始めるまでは、実は中古品を買うことに抵抗があったんです。なんとなく新品の方がいいなと思っていて。でも、今はあえて中古品を買うようにしています。お金さえ出せば良い物が手に入るのは当たり前ですが、「豊かさ」ってそれだけじゃない。メンテナンスしながら、良い物を長く愛着を持って使い続けることの方に、今は価値を感じます。そんなふうに、ポリシーを持って物を持ちたいと思うようになりましたね。

ーとても素敵な考え方だと思います。ただ一方で、物を手放せずに家の中が大変になっているシニアの方も多いのではないかな、と。そういった方にもしアドバイスがあれば教えてください。

松野「物を手放せない」というお気持ちはとてもよくわかります。思い出がくっついていればなおのこと、物以上の価値があるんだと思います。だけど、物がいっぱいで今スッキリ暮らせていないなら、手放すことを考えてもいいのではないでしょうか。捨てるのではなく、手渡す。必要としている人がいるんだと知れば、手放すこともできるのではないかな、と。

また、できたら物の整理を親族の方たちとしていただけるといいですね。片付けを単なる作業としてではなく、思い出話ができるコミュニケーションとして行うと、とてもいい時間になると思います。

ー今後まごころサポートを通じて、どのようにシニアの方に貢献していきたいですか?

不用品をクリーニングしている様子

松野繰り返しますが、不用品はどこのお宅にも必ずあるものです。僕たちは不用品に関して必ず力になれる自信があるので、そこでできた繋がりを、楽しい形、メリットのある形で返していきたいです。

僕たちの仕事は、お客様に何かを足すのではなく、引いていくこと。だから物を引いたあとに、その方の元に何が残るかをいつも考えています。例えばお金、時間、気持ち……そういったメリットを、物の代わりにシニアの方に届けられたらと思います。

ー新しい「豊かさ」について考えられるお話でした。これからもご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました!

前編はこちらから

【全国のまごころストーリーVol.7】「捨てる」から「つなげる」へ。 物と人の関係性から生まれる、新しい豊かさ。【前編】

<Photo:関 愉宇太、Text:土門 蘭>

「まごころサポート 藤沢十色店」会社概要

店舗名:まごころサポート 藤沢十色店

店舗住所:神奈川県藤沢市遠藤4489-105

社名/屋号:株式会社十色

代表:松野幸弘 

本社所在地:〒249-0008 神奈川県逗子市小坪4-14-1



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