2022/12/02
まごころストーリー
【全国のまごころストーリーVol.7】「捨てる」から「つなげる」へ。 物と人の関係性から生まれる、新しい豊かさ。【前編】
あなたの家には、「いらないもの」はありませんか?
家具、家電、食器など、そろそろ捨てようと思っていたものがいくつかあるのではないでしょうか。
今回お話をうかがったのは、まごころサポート 藤沢十色店の代表・松野幸弘さんと実務責任者の逵 春美 (つじ はるみ)さんです。
長年不用品回収の仕事に携わり、株式会社十色として不用品に関するコンサルティングにも携わっている松野さん。今後は不用品を介してシニアの方々に貢献したいと、今年まごころサポートをスタートされました。
不用品回収を通じて、お二人はどんなふうにシニアの方々と関わっていらっしゃるのでしょうか。「捨てる」から「つなげる」へ……そこから生まれる新しい豊かさについて、お話をうかがいました。
「いらない人」と「欲しい人」をつなげる
ーまずは、株式会社十色さんについて教えてください。
松野:十色の理念は「人が活きる、個を活かす」というものです。インターネットが普及して便利になっていますが、そんな中ふと「人の仕事がどんどんなくなっているけれど、今の世の中で人が仕事をする意味って何なのだろう」と考えることがありました。そこで「人の力を必要とする仕事をしてきたい」と思い、十色を立ち上げたんです。
主な事業内容は、不用品回収業者や不動産業者に対する、不用品を軸としたコンサルティングです。不用品は、どこの家にも必ずあるもの。それを媒介として、「いらない人」と「欲しい人」をつなげる仕事をしています。
ー不用品に関するお仕事を始められたのはなぜだったんでしょうか?
松野:正直にいうと、僕は仕事に対してのこだわりがありませんでした。ただ人の役に立てさえすれば、必然的に需要やお金が生まれると思っていたので、できることならなんでもよかった。当時広告代理店で仕事をしていたのですが、その縁で付き合いがあった不用品回収の会社で手伝いを始めたことが、きっかけになると思います。
その仕事をする中で、日本では売れない古い家具や食器などが、海外でよく売れる様子を見て衝撃を受けました。僕がおもに取引している国はフィリピンなのですが、フィリピンは中国や韓国からの輸入品が多く、自国で生産しているものが少ない国で、なおかつ日本の文化が好きな人が多いため、日本から輸出されてくる中古品が人気なんですね。オークションで取引される様子を見たときは「捨てなくても、買ってくれる人がいるんだ」と、大きな可能性を感じました。このように、持ち主にとっては「こんな物、売れないだろう」と思われる物でも、必要としている方がいらっしゃったり、買い取ってくれる企業が存在します。
今は、食器、家具、本はもちろん、壊れた家電やぼろぼろになった傘、果ては誰も住まなくなった家まで引き取り、買い取りしています。鉄もプラスチックも生鮮食品も、必要としているところにつなげられたら需要が生まれる。「いらない人」と「欲しい人」をうまくマッチングできれば、「捨てる」以外の「売る」「譲る」という新しい選択肢ができます。そんなテーマで、今の事業を行っています。
ーありがとうございます。コンシェルジュの逵さんも、自己紹介をお願いできますか?
コンシェルジュの逵 春美(つじ はるみ)さん
逵:私は、松野が属しているもうひとつの会社・フリーアールで松野と出会いました。フリーアールもB2Cで不用品回収をしている企業なのですが、私はそこでウェブ集客などを担当しています。十色では、まごころサポートの実務責任者・コンシェルジュとしてお客様をサポートしています。
ー今日はそんなお二人にいろいろとお話をうかがいたいと思います。よろしくお願いいたします。
シニアの方との新しい架け橋に
ーまずは、なぜまごころサポートを始めようと思われたか教えていただけますか?
松野:僕はもともと東京に住んでいたのですが、結婚を機に10数年前に藤沢に引っ越してきました。藤沢は子育てがしやすい街として人気で、今も若者世代の流入が多くある街です。
ただそれと同時に、昔から住んでいるシニアの方が多くいらっしゃって、人口40万人中10万人が高齢者だと言われているんですね。4人に1人が65歳以上。うち、2万世帯が独居老人だそうなんです。
ーそんなにいらっしゃるんですね。
松野:僕自身藤沢で生活をしていると、子育て世代のような若者はネット上で情報を拾い、行政のサービスなどをうまく活用し、快適に生活していると思う反面、ネットの活用が得意でない高齢者は少し置き去りにされているなと感じる場面をよく目にします。高齢者向けの施設などは作られているみたいですが、実際にシニアの方が手厚くケアされているかというと、うまくマッチングができていないように思います。
というのも不用品回収で街を巡回していると、よく一般のお宅の庭に、使っていないと思われる家電や不用品を見かけます。そういうときはチャイムを鳴らして「もし不用品があれば無料で引き取りますよ」と声をかけるんですが、お住まいなのは大抵一人暮らしの女性のシニアの方。「実は家の中にもいらないものがあって」と、仕事につながることがよくあるんです。
そこでよく、他の頼まれごとが発生するんですよ。「電球が切れて換えられない」とか「上にある荷物を下に降ろしたい」とか。これまではサービスでやっていたんですが、あくまで不用品をきっかけに声をかけたから繋がれただけ。そうではなくて、シニアの方のお困りごとにもっとダイレクトにアプローチできないかと考えていたんです。
そんなときにまごころサポートで出会って「これだ」と思いました。まごころサポートを活用すれば、「いらないものはないですか?」ではなく「お困りごとはないですか?」とチャイムを鳴らすことができる。そこから不用品回収の仕事につながることもあれば、うまく協業できると思ったんですね。さっそく逵に「手伝ってくれる?」と尋ねたら、すぐに「やる!」と快諾してくれました。
ー逵さんは、まごころサポートに対してどうして前向きだったんでしょうか?
逵:まごころサポートは、今後絶対に必要になることだと感じたからです。人から求められることが商いだと思うので、私自身、社会貢献ができる仕事がしたいとずっと思っていたんです。まごころサポートを始めてからは、街中で歩いているときもシニアの方が気になるようになってきました。「どこへ行かれるんだろう。一人で大丈夫かな」と目が行ってしまったり……。
ー社会貢献という夢を叶えられたのは素敵ですね。ちなみに、まごころサポートではどんなご依頼が多いのでしょうか?
引き取った不用品の家具をコンテナに積み込む様子
松野:今は季節がら、庭の剪定や買い物代行が多いですね。この前は逵が草むしりをしていたときに、ズボン越しにお尻を蚊に10ヶ所くらい刺されていたそうです(笑)。
逵:そのお宅のお庭はとても広くて、一人暮らしでは手入れができないと。それでいいところを見てもらおうと夢中になったら、すごく蚊に刺されて(笑)。でもそのおかげで信頼された気がするので、刺された甲斐があったなと思います。
続きは後編で!
【全国のまごころストーリーVol.7】「捨てる」から「つなげる」へ。 物と人の関係性から生まれる、新しい豊かさ。【後編】
<Photo:関 愉宇太、Text:土門 蘭>