全国のまごころストーリーVol.4
大切なのは、シニアの自立支援。
介護事業に「まごころサポート」を
取り入れる理由。【前編】

2022/08/22

まごころストーリー

全国のまごころストーリーVol.4 宝塚といろ店

皆さんは「ショッピングリハビリ」をご存知でしょうか?

外出困難なシニアの方が、お買い物を楽しみながら健康づくりをするという、画期的なリハビリです。

 

今回は、このショッピングリハビリを介護事業に展開している、まごころサポート 宝塚といろ店の代表・尾添純一さんにお話を伺いました。

尾添さんは宝塚市のスーパー内で、ショッピングリハビリを活用したデイサービス施設「ひかりサロン」を運営。FC展開にも力を入れていて、現在は全国に14店舗(2022年8月時点)と広がりを見せています。

 

10年に渡り携わってきた介護業界で、新しいことへチャレンジし続けている尾添さんが、昨年新たに挑戦したのがまごころサポートでした。

 

尾添さんが介護事業にまごころサポートを取り入れた理由とは何なのでしょうか? 現状の課題や目指す介護の形についてとともに、お話を伺いました。

 

前編後編の2回に分けてお届けいたします。

根底にある「ファミリーファースト」というコンセプト

ショッピングリハビリを介護事業に展開している尾添純一さん

ー尾添さんは、銀行員、コンサル業を経たあとに、現在の会社を立ち上げられたそうですね。初めは中古車ビジネスをされていたと聞きましたが、なぜそこから介護事業へと転換されたのでしょうか?

僕には3人子供がいるのですが、そのうちの1人が11歳で亡くなっているんです。彼女は重度の障害を持って生まれて、指1本自分では動かせませんでした。彼女を妻と一緒に育てていたとき「この子をなんとかしたい」と思っても、医者じゃない僕には何もできなかったんです。

ただ、そんな状況の中でも、当時「もしかしたら自分にも何かできるのではないか」と思えたのが、娘の同級生の親御さんのことでした。これまで勉強も仕事もされてきて、社会で活かせるスキルもあるのに、たまたま授かった子に障害があることで定職につけず、仕事に困っていらっしゃる方が多くいました。自分がそういう方にお仕事を頼めるようになれたらいいのに、と、起業してからもずっと思っていたんです。

そんなとき、会社員時代の同僚が「介護業界で独立するんだ」と教えてくれました。「尾添も中古車業界だけじゃなくて、他の業界も見たらどうだ」と言われて、「あっ」と思ったんです。介護事業なら、障害を持つ子供を育ててきたホスピタリティが活かせるし、時間の融通も効きやすい。これなら娘の同級生の親御さんたちとも仕事ができるのではないか、と。それで、デイサービス事業を立ち上げたのが始まりでした。

ー最初の動機は、身の回りにいる「介護をするご家族のため」だったんですね。

そうなんです。僕がずっと大切にしてきたコンセプトに「ファミリーファースト」というものがあります。介護が必要な人の居場所を作ることで、その人の家族が何不自由なく過ごせるようにしたい。そんな思いが強くあるんですね。

僕たち自身も当事者として、なかなかストレスを発散できる場所がありませんでした。だけど、ずっと頑張ることなんてできません。誰かに助けてもらいながらでも、自分らしく生きる時間が必要です。

介護状態にある本人に愛を注ぐのは当然として、その方をずっと見ている家族の方の助けにもなるような場所を作りたい。そう思い、介護事業へと会社を方向転換させることになったんです。

介護事業は誰のためにある?

ー介護事業を続ける中で、尾添さんは「ショッピングリハビリ」を取り入れていらっしゃいますね。まずはこの「ショッピングリハビリ」について概要を教えていただけますか?

ショッピングリハビリとは、買い物を通じて介護予防を実現する取り組みです。「楽々カート」という、歩行が難しい方でも体重を預けて歩くことができるカートを使用して、スーパーの中をウォーキングしながら買い物します。買い物は体も頭も両方使う行為。しかも日常生活に必要なことなので、シニアの方の自立支援にもつながります。

買い物難民の救済だけでなく、シニアの方の社会参加・介護予防にもなり、また経済活性、地域貢献にもつながる。そんな新しい形のリハビリです。

ーとても興味深いですね。ショッピングしながらリハビリだなんて。

ショッピングリハビリの発案者である杉村卓哉に出会って話を聞いたとき、すぐにピンときました。今僕は、彼と一緒にショッピングリハビリを普及する会社を運営しているのですが、それくらい「これだ!」と思ったんです。

ーそれはなぜだったんでしょう?

数年間デイサービスを運営しながら疑問に感じていたことが、「介護事業は誰のためにあるんだろう?」ということでした。デイサービスの中には、朝から晩まで椅子に座りっぱなしで、食事とトレーニングだけして終わりというところもあります。さらにシニアの方にとっては家とデイサービスしか行く場所がなく、トレーニングをしてもそれを発揮できる場所がないんですよね。

でも、本当はみなさん、ご自分で料理やお買い物もしたいんです。それなのに、周りの人から「危ないから座ってて」と言われてしまう。このままでは元気な人も元気じゃなくなって、生活能力が落ちてしまう、と感じていました

ー危険を避けようとする結果、シニアの方の行動を制限してしまっている、と。

はい。さらに言えば、まだ自分で生活できる高齢者を、デイサービスが囲い込んでいるように感じたんです。これだけ元気なシニアを囲もうとすれば、人手不足になるのは当たり前です。

でも僕は、「高齢者もずっと元気に自分で暮らせる方がいい」と強く思っています。まだ元気なシニアの方たちを「要介護にしない」方針で動けば、医療費も介護費も上がらなくてすむし、何よりご本人やその家族にとってもメリットしかありません。そのためには、ムーブメントを起こすしかないと思っていました。

シニアに「ショッピングリハビリ」を説明している様子

ーそんなときに出会ったのが「ショッピングリハビリ」だったのですね。

そうです。まず、「買い物」っていう着眼点がとてもいい。人の行動には「やりたいこと」と「やらなくてはいけないこと」の2軸があると思うのですが、買い物はその両方を満たしているから、シニアの方にとっても、通常のリハビリより楽しんでできるんですよね。

それに買い物へ行けば歩くだけじゃなくて、「冷蔵庫に何があったかな」と記憶を呼び出したり、「この商品は傷んでないかな」と商品を評価したり、お金は足りるだろうか、あれはどこにあるだろうか、など、とにかく頭を使います。

一人で歩くのが難しい方でも、適切な道具さえあれば援助なしで自分の行きたい場所へ行ける。「買い物」を通してシニアの方の生活能力を鍛えることができるのではないか、と思い、ショッピングリハビリを導入することにしました。

 

続きは後編で!

【全国のまごころストーリーVol.4】 大切なのは、シニアの自立支援。 介護事業に「まごころサポート」を 取り入れる理由。【後編】

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