2022/08/22
まごころストーリー
全国のまごころストーリーVol.4 宝塚といろ店
皆さんは「ショッピングリハビリ」をご存知でしょうか？
外出困難なシニアの方が、お買い物を楽しみながら健康づくりをするという、画期的なリハビリです。
今回は、このショッピングリハビリを介護事業に展開している、まごころサポート 宝塚といろ店の代表・尾添純一さんにお話を伺いました。
尾添さんは宝塚市のスーパー内で、ショッピングリハビリを活用したデイサービス施設「ひかりサロン」を運営。FC展開にも力を入れていて、現在は全国に14店舗（2022年8月時点）と広がりを見せています。
10年に渡り携わってきた介護業界で、新しいことへチャレンジし続けている尾添さんが、昨年新たに挑戦したのがまごころサポートでした。
尾添さんが介護事業にまごころサポートを取り入れた理由とは何なのでしょうか？ 現状の課題や目指す介護の形についてとともに、お話を伺いました。
前編後編の２回に分けてお届けいたします。
ーショッピングリハビリを始められた方には、何か変化は起こっていますか？
いろんな変化があるのですが、特に印象的なのが、多くの女性の利用者の方がお化粧をして来てくださることです。お化粧していくデイサービスなんて、おそらくここ以外にあまりないんじゃないかなと思うんですけど。
ーへえー！ おしゃれして来てくださるんですか。
同年代の人に会うだけでなく、老若男女、誰に見られるかわからないスーパーという場所に行くとなると、お化粧も洋服も髪型も意識が変わるのだと思います。ご自身がこの街で、見て見られて暮らしている。これは介護職だけでは実現できない、イキイキした生活を演出する最高の方法だと思うんです。
ー確かに、閉じられた空間ではないからこそできる演出ですよね。
週に一度スーパーに行けるとなれば、普段の生活から意識が変わります。例えばテレビを見ていても、ショッピングリハビリに行く予定があれば、「次回は、この番組で紹介されたお菓子を探してみよう」とか「このメニューを試してみよう」とか考えられるじゃないですか。「これ買ったけどおいしかったよ」などと話す相手もいれば、なお嬉しい。
ー本当にそうですね。ショッピングリハビリがきっかけで、毎日がワクワクしそうです。
介護職をしていてよく思うのですが、人が急激に老いる瞬間ってあるんですよ。それは、「行動を抑制されたとき」なんです。
ー行動の抑制、ですか。
これは僕の所感ですが、男性の場合は「運転免許を返納したり運転しなくなったとき」、女性の場合は「買い物と料理を制限されたとき」が特に顕著です。両方とも、体や頭、いろんな能力を使って行うことなので、その役割を取り上げられると、気が衰えて体にも来てしまうんですよね。
「危ないから」と家で座りっぱなしにさせられると、足腰も弱るし、気が滅入っていいことがひとつもありません。だから、できるうちはずっと自分でやっていただくのがいいんです。
ーそのうちの一つがお買い物である、と。ひかりサロンの利用者さんに先ほどお話を伺いましたが、みなさんも「ここに来る日が楽しみだ」とおっしゃっていました。
それはとても嬉しいことですが、最終的にはその言葉すら出ないほど、自分で買い物をすることが当たり前の状況になってほしい。1日でも長くその生活が続けられるようになればいいなと思います。
ーそんなひかりサロンに、昨年「まごころサポート」を導入されましたが、その理由を教えていただけますか？
介護事業をずっとやっていると、介護の領域ではやってあげられないことが多く出てきます。例えば訪問介護でお宅を訪れた場合、部屋の窓の内側は掃除することができても、外側は拭けないとか。庭の草がぼうぼうに生えているけど手伝ってあげられないとか。
そもそも、僕たちは週に1度しかお会いできません。その他の6日間も生活は続くのに、そこにもタッチできないんです。
ー現状では手の届かないニーズがあるんですね。
はい。その部分に対しても何か貢献できないかと思っているところに、まごころサポートの話を聞き、「まごころサポートならそのニーズを吸い上げられる」と思ったんです。介護事業とのシナジーが抜群だと思い、導入を決定しました。
今ではひかりサロンの利用者の半分くらいの方が、まごころサポートも利用されています。ご依頼内容は、草むしりとか、家具の移動とか、力仕事系が多いですね。「こんなことも頼めるかしら」というご相談も受けられるようになったので、信頼関係はより強くなっていると思います。
ーどんどん新しいことにチャレンジされている尾添さんですが、そのモチベーションはどこにあるのでしょうか？
僕は、介護事業者が現状に甘んじていてはいけないと思っているんです。高齢化が進む中、介護事業のマーケットは広がる一方ですが、介護保険はもう破綻寸前で、税金をこれ以上使えない状態。このままでは、若い世代の未来が破綻する危険もあります。
うちの会社は「未来」という言葉が大好きなのですが、介護事業者と言えども「介護だけ」じゃだめだと思っています。今のシニアのためだけじゃなく、いつかシニアになる両親世代や自分たちの世代のためにも、未来づくりをしていきたい。そのためには、いかに長くシニアの皆さんに自立していただき、ギリギリまで介護状態にならないでいてもらえるかが肝になります。
ーシニアの方が長く元気でいられる環境づくりが、その周りの人々の未来づくりにもつながるんですね。
その通りです。今後は、ショッピングリハビリを全国に広げて、まごころサポートと掛け算していきたいと思っています。ショッピングリハビリは週に1度の通いの場として、まごころサポートは残り6日間の頼れる存在として。
この2輪をうまく機能させながら、できないことは人に頼り、できることは自分でする生活を続けられたら、シニアの方も長く元気に過ごせると思うんです。介護なしで生活できる楽しみを、長く持っていただきたいですね。
【前編記事はこちら！】
【全国のまごころストーリーVol.4】 大切なのは、シニアの自立支援。 介護事業に「まごころサポート」を 取り入れる理由。【前編】
シニア利用者 Kさん
腰を圧迫骨折して以来歩きにくくなってしまって、何か運動をしなくてはいけないなと思っていたときに、娘からひかりサロンを勧められてここに来るようになりました。
ショッピングリハビリでは、いろんなものを見て触って買えるのが楽しいですね。もともと料理の教室をしていたので、珍しい食材を見るとどう料理しようかとワクワクします。作ってみて美味しかったらお裾分けしたり。今では毎回来るのが楽しみで、他の予定より優先させるほどなんですよ（笑）。
まごころサポートも利用していて、この間は使っていなかったマッサージチェアの処分を手伝ってもらいました。どこに頼んだらいいのかわからなかったので、週に1度来る場所がこうして何でも相談できる場所になるのはありがたいです。
シニア利用者 Sさん
私は胃の手術を2年間で3回もして、体が弱って自転車に乗ったり歩くことが難しくなってしまったんです。ケアマネさんに教えてもらってひかりサロンに来るようになったのですが、ここに来ると体はもちろん頭の運動にもなっていいですね。いろんな人と話せるので、とても楽しい気持ちになります。
まごころサポートでは、スマートフォンやタブレットの使い方を教えていただきました。苦手だけどチャレンジしたら、丁寧に教えていただいたおかげで最近使えるようになったんです。今はタブレットを使って、日々心に残ったことを書いて、プリントアウトして残しています。手で文字が書けなくなったので、こうして他の道具と使って自分の気持ちを残せるのは嬉しいですね。いつか子供たちにも読んでもらえたらいいなと思っています。
シニア利用者 Fさん
買い物も運動もなかなかできなくなってくる中、ひかりサロンはそのどちらもできるので一石二鳥です。毎回たくさん買い物をして帰るんですよ。ここだといろんな方に会えるので、それも楽しみです。
まごころサポートではお買い物の代行をお願いしました。自分ではなかなか買いに行けないものを買ってきてもらったんですが、やっぱり買い物は自分で見て触ってするのが楽しいですね。でも、いつかは一人ではなかなか来にくくなると思うから、それまでにいろんなことを試しておこうと思っているんです。できるだけ長く自分で買い物ができるように、ここで鍛えておこうと思っています。
シニア利用者 Sさん
ひかりサロンに来る前に足を骨折してしまって、一人で歩くのが難しくなってしまいました。それでショッピングリハビリを始めたのですが、お買い物をしながら運動になるのがいいですね。いろんな売り場を見て歩くのも楽しいし、歩数計をつけて歩数を計っているのでやる気にもつながります。
まごころサポートはまだ使ったことがないんですが、いつか必要なときが来たらお願いしたいなと思っています。
店舗名：まごころサポート 宝塚といろ店
店舗住所：兵庫県宝塚市小林5-5-47イズミヤ小林3階 ひかりサロン宝塚小林内
社名／屋号：コンフィット株式会社
代表：尾添 純一
本社所在地：〒665-0034 兵庫県宝塚市小林5-5-47
＜Photo：関 愉宇太、Text：土門 蘭＞
