【全国のまごころストーリーVol.9】
ジーバーFOODの皆さんに聞く
若者もイキイキ!世代を超えた
「元気の循環」。【後編】

2023/05/24

まごころストーリー

【全国のまごころストーリーVol.9】ジーバーFOODの皆さんに聞く 若者もイキイキ!世代を超えた「元気の循環」。【後編】

スタッフの平均年齢70歳のジーバーFOODでは、サポート役として若い世代も活躍しています。

 

おじいちゃんおばあちゃんと働く中で、彼女たちにも何か変化や発見はあったのでしょうか?

 

世代を超えて一緒に働くことで起こる相互作用について、ジーバーFOODの調理責任者・金野春香さんと、マネージャー・山崎莉沙さんにお話を聞きました。

 

 

金野 春香さん :株式会社ユカリエ (ジーバーFOOD事業 調理責任者)

 

山崎 莉沙さん :MIKAWAYA21株式会社 (ジーバーFOOD事業 マネージャー )

私たちがレールを敷くのではなく、一緒にレールを敷いていく

ーお二人から見て、ジーバーFOODで働くシニアの方にはどんな変化がありましたか?

金野さん:昨年8月から皆さんと一緒に働いているのですが、大きく変化していると思います。一番は、意見を積極的に言ってくださるようになったこと。最初は教えてもらう側として決まったレシピを作ってくださっていたのですが、だんだんと「せっかくだから、私たちの色を出したいよね」という声が上がってきました。その意見を取り入れていくうち、自分たちで考えたメニューが「おいしい」と言われることでより喜びを感じられるようになって、どんどん意見交換が活発になっていったんです。それで今年の3月に、正式に委員会を作りました。

また、一緒に過ごすうちに、おじいちゃんおばあちゃんが普段過ごしているコミュニティも見えてきました。例えば、お友達がお弁当を買いに来てくださったり、ご家族がジーバーFOOD主催の料理教室に来てくださったり。おじいちゃんおばあちゃんが培ってきた繋がりがジーバーFOODを通してますます活性化しているのは、とてもいいことだなと思いますね

山崎さん:最初は皆さん、「ついていくのに必死」という感じだったんです。だから私たちも、最初は無理なく楽しいペースでやってもらおうと、お弁当の注文を取り過ぎずに50個くらいからスタートしました。だけど、もともと料理上手な方が揃っているので、上達がものすごく速いんです。それに日々「おいしいよ」とお客様からのお声が来るたびにモチベーションが上がっていくので、1ヶ月後には皆さん「まったく別人じゃないか?」というくらいやる気に満ち溢れるようになりました。自宅でも練習を重ねたり、チームワークも技術も上がって、今お弁当は1日最高200個くらい作れるようになったんですよ。

ー200個!? それはすごいですね。

山崎さん:だから今、とてもいい雰囲気なんです。現場のオペレーションではその雰囲気が続くよう、おじいちゃんおばあちゃんたちが無理なく、でもチャレンジもできるような環境づくりを意識しています。

金野さん:私が意識しているのは、調理中に一人ずつに声をかけることですね。なるべくすべての方に、毎日必ず何かを話して帰ってもらうようにしているんです。その中で、「今、家で練習してるのよ」とか「昨日こんなことがあったの」とか、体調や心境の変化、なぜジーバーに来てくださるのかなど、お一人ずつの背景を聞くようにしています。そうすると個性や特徴も見えてくる。一人ひとりに合ったコミュニケーションを取るように気をつけています。

山崎さん:また出てきた意見については必ずリアクションを返し、取り入れるべきことはちゃんと仕組み化するようにしています。例えば談話室もそうですね。以前は調理だけしたら帰っていたのですが、おばあちゃんたちから「もう少しコミュニケーションが取りたい」という声をもらったんです。それで、キッチンの外でゆっくり話せるスペースを作りました。今では談話室が仲を深めるための憩いの場となっているし、そこからさらに皆さんの意見が上がってくるようになっています。

そんなふうに、おじいちゃんおばあちゃんたちはどんどん変わっていきました。それに合わせて、私たちも変わっていかないといけないねと話しています。私たちがレールを敷くのではなく、一緒にレールを敷いていこうと思っています

大先輩の頑張る姿にパワーをもらう

ーお二人も、おじいちゃんおばあちゃんから影響を受けていますか?

金野さん:いつも刺激だらけで、すごく影響を受けてます。「もっとこうするといいよ」「こういうレシピがいいんじゃない」って、意見をもらわない日がないくらい皆さん意欲的でこっちの方が煽られます(笑)。本当に皆さん「ここをもっと良くしたい」って気持ちが強いんですよね。私自身も、それに応えていきたい。より働きやすくするには、楽しくするにはどうしたらいいのかを考えていきたいと思うようになりました。

山崎さん:私は、ここで働き始めてからストレスがまったくなくなりました。周りの人にもよく「なんか雰囲気が穏やかになったね」って言われるんです(笑)。おばあちゃんたちが頑張ってジーバーFOODを盛り上げようとしている姿を見ていると、「なんで私、こんなにちっぽけなことで悩んだりイライラしたりしていたんだろう?」と思うんですよね。大先輩の頑張っている姿に、すごくパワーをもらいます。

あと、皆さんとにかく仕事が速いんですよ。スタッフのひとりである安藤さんは水彩画が得意なのですが、この間「ジーバーFOODで使いたいので、こんな絵を描いてもらえませんか」とお願いしたら、翌日には「こんなのでいい?」と水彩画2枚とメニュー表1枚を描いて持ってきてくださって。こんなに速く、こんなに高いクオリティで仕上げてくださるなんて!と驚きました。熱意と仕事に対する姿勢は負けちゃいますね。勉強になるし、見習いたいと思っています。

金野さん:また、個人的に特に楽しみなのは賄いでしょうか。おばあちゃんたちが作る賄いはとてもおいしくて、お弁当よりも気合が入っている時があるんですよ(笑)。いろんな出身地の方がいるのですが、この間は秋田出身の米沢さんが、賄いできりたんぽ鍋を作ってくださいました。その他にも、凝った牛すじの煮込みカレーを作ってくれたり。今では賄い用の冷蔵庫もできたくらい(笑)手が混んでいるんです。

山崎さん:皆さん、誰かを喜ばせたいという気持ちが強いんですよね。この間はペンキ塗りを30年やってきたおじいちゃんが、「ペンキを塗らせろ」と壁を塗ってくれました。あと、今度イートインスペースを使って夜市をしようと話しているのですが、そうしたら「こたつが余ってるから持っていきな」とか「お皿があるから使いなさい」とか、たくさん協力してくださって。私たちがやりたいことが、おじいちゃんおばあちゃんの「任せろ」「持っていきな」で成り立つことに、可能性をとても感じます

おじいちゃんおばあちゃんを中心とした「元気の循環」

ー若者とシニアという異なる世代が一緒に働くことで、どんな効果が生まれていると思いますか?

金野さん:おじいちゃんおばあちゃんを中心に「元気の循環」が起こっているなと感じます。皆さんによく言われるのが「もっと頼ってね」ということ。私が自分一人で仕事を抱え込んでいると「ちゃんと言いなさいよ」って怒られるんです(笑)。頼られて「ありがとう」と感謝されることで、おじいちゃんおばあちゃんがイキイキするのを感じます。

山崎さん:それに皆さん、ただ自分たちが培ってきたスキルを提供するだけじゃなく、このコミュニティをより良くするために、私たち若い世代からも学ぼうとされています。LINEの使い方やSNSの使い方もそう。それがより皆さんの暮らしを豊かにしているように感じますね。

金野さん:また、ジーバーFOODの中だけではなく、地域でも元気の循環が起きていると感じます。長町は独居老人が多く、店頭販売では若者より65歳以上の方が買いに来ることが多いんですよ。「自分一人だと丁寧に食事を作らないから助かる」とか、「家族と同居しているけれど、孫に合わせた味付けなので、たまにはこういうお弁当を食べたい」とかお手紙をもらうこともあります。それを読むと、同世代の方にもお弁当を通して元気を与えているなという実感があります。また、そんな地域の方の喜びの声が、ジーバーFOODのおじいちゃんおばあちゃんの喜びにもなっている。そんなふうに、地域の中でも元気がぐるぐる回っているように思いますね。

山崎さん:さらに今はまごころサポートと連携して、地域のシニアの方に週1でお弁当を配達する取り組みも行っています。「シニアのお困りごとを解決する」まごころサポートと「お弁当作りを通してシニアの活躍する場を作る」ジーバーFOODは、文脈は異なるもののとても相性がいいんです。ジーバーFOODに参加している人はホスピタリティや地域貢献の意識が強いので、まごころサポートのコンシェルジュにも向いていて、実際コンシェルジュになった方も2名いらっしゃいます。また、ジーバーFOODのイベントに参加してくださった若い方がコンシェルジュになった例もあって、その二つの相互作用も感じますね。

ーとても可能性を感じるお話です。では、最後に今後の目標について教えてください。

金野さん:おじいちゃんおばあちゃんが秘めている力を、ジーバーFOODを通して社会に繋げて、喜びに変えていきたいですね。ここでできることを活かして、「こんなこともできるんだ!」「ここに来てよかった」と思ってほしい。ジーバーFOODでおじいちゃんおばあちゃんが元気になって、地域も元気になる。そんな循環が広がっていけばいいなと思います。

山崎さん:「やりがいや生きがいを持つことでこんなにも人生は豊かになるんだ」ということを、ジーバーFOODで何度も見てきました。ゆくゆくは全国へとコミュニティの和を広げて、一人でも多くの人の人生を豊かにできるよう貢献したいです。

 

ジーバーFOODとは?】 https://magocoro.me/gbfood/

「ジーバーFOOD」は、まごころサポートを展開するMIKAWAYA21株式会社と、まごころサポート仙台ユカリエ店の母体である株式会社ユカリエの共同プロジェクトです。地域のシニアの方々がお弁当を手作りし、仙台市内の企業に宅配したり、キッチンカーでの店頭販売を行っています。シニアの人材活用と、企業の健康経営、地域活性化というサイクルの産出・循環を目指しています。

▼前編はこちらから

【全国のまごころストーリーVol.9】ジーバーFOODの皆さんに聞く 「いくつになっても、イキイキ元気に過ごすには?」【前編】

<Photo:関 愉宇太、Text:土門 蘭>



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