スマホから生まれる、世代を超えたつながり
ー中高生スマホ講師職業体験記ー

2022/09/15

コラム

シニアからのご要望がとても多いスマホのお困りごとにこたえるため、まごころサポートでは毎月スマホ教室を開催しています。そしてこの夏、荒川本店では中学生と高校生の二人が、人生の大先輩でもある生徒の皆さんに向け講師役を務めました。初めて体験した「働く」ことの意味、親の思いや世代を超えたつながりを、お伝えします。

生まれて初めての「働く」という体験

少し緊張しながら自己紹介をする富越陽生(高校1年)くん

「自分のメールアドレスはわかりますか?そうしたらここに入力してください」

 高校1年生の富越陽生(とみこしようせい)くんが、スマートフォン(スマホ)の画面を一緒に見ながら説明します。この日はじめて、まごころサポートのスマホ教室に参加した佐藤きみさんから「同じ歳の人たちも投稿しているツイッターを私も見てみたい」とリクエストをもらいました。無事に登録ができ、何人かをフォロー。自分よりも年配の方がスマホを使って人生を楽しんでいる姿を見て、きみさんの目が輝く。それを見て陽生くんも、嬉しそうに笑います。

スマホ教室の講師を務めた高校一年生の富越陽生(とみこしようせい)くん

 

中学3年生の河合悠里(かわいゆうり)くんは「シェアサイクルを使ってみたい」というリクエストにチャレンジ。検索で見つけたアプリをインストールし、登録まで終えることができました。お願いした近藤和子さんも満足なご様子。サポートした悠里くんもホッと一息つきました。あるスマホ教室の一コマです。

スマホ教室の講師を務めた中学三年生の河合悠里(かわいゆうり)くん

普段はゲームやSNS、YouTubeの視聴などにスマホを利用している二人は、お母さんからスマホ教室の話を聞き「やってみたい!」と講師役の職業体験に手を挙げました。二人にとってはじめての「働く」という体験です。陽生くんは、お母さんが介護の仕事をしているので高齢の方に親しみを感じていて、悠里くんは自分のおばあちゃんにスマホを教えたことがあり、喜んでくれた顔を思い出しました。そうしてこの日「人の役に立つことをしてみたい」という二人の願いが、無事叶いました。

シニアが誰にもきけないスマホのこと

私たちまごころサポートが、日々たくさんのシニアとお話をしている中で、スマホをうまく使えずにストレスを感じていたり、諦めてしまったりしている方が、なんて多いのだろうと気づきました。ある女性は、QRコードの読み方を誰にも聞けずに過ごしていました。その期間なんと6年間。近くには娘さんが住んでいるのに、です。

シニアの方がスマホを持つ理由はほぼ、連絡手段です。それも、どちらかというと本人の希望というより家族の要望です。だから家族はトラブルになることを嫌がり、それ以外の使い方をあまり教えません。まるで子どもと同じような扱い。これでは、スマホの面白さなど知るはずもないし、持つことさえ面倒と感じてしまっても仕方ありません。

スマホに年齢は関係ありません。むしろ、行動に制限がかかりやすいシニアにこそ、その便利さは生かされます。そんなことから、私たちはシニア向けのスマホサポートに力を入れることにしました。検索やマップ、LINEの使い方を覚えるたび、教室は驚きと笑顔に包まれます。そして、一台のスマホを通じて若い子どもたちとシニアの接点を作れたら、それぞれにとって素敵な体験の共有になるのではないか。それは、シニアのお困りごとを通じて、地域社会をより良いものにしていきたいという私たちの願いでもあります。こうして、職業体験の場が用意されました。

世代を超えたつながりをこれからも

参加されたシニアの皆様も一緒に記念撮影!

悠里くんのお母さん、弥恵(やえ)さんは言います。

「普段は自分のことをあまり話さないんですが、教室から帰ってきたら『すごく楽しかった』って。コロナによって部活動や修学旅行、職業体験など、中学生ならではの体験が制限されてかわいそうだと思っていました。今回の経験が、自分の将来を考えるきっかけになってくれたら嬉しいです」。

陽生くんのお母さん、梨詠(りえ)さんも「私自身、シニアの方々には何度も助けられ、学ばせてもらってきました。息子には、学校だけが全てじゃなくて、いろんな世界があることを知ってもらえたら」と話します。

教室でのできごとを振り返り「教えるっていうより、仲良くなって一緒に楽しむことが大事なんだって思いました」という、大切な気づきを得た陽生くんと悠里くん。参加した方々からも「またあの子たちに会って、スマホを教えてほしい」との声をいただきました。まごころサポートはこれからも、世代を超えたつながりを、地域に作り続けていきます。

 

Text:鈴木 孝英(MIKAWAYA21)

 

▲TOPへ戻る