まごころアパート
キックオフイベント
ダイジェスト(2)

2024/08/26

イベント情報

◆ はじめに

 この度、弊社と株式会社エンジョイワークス(本社:神奈川県鎌倉市、代表取締役 福田 和則)が連携し、国土交通省人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業に採択されている「まごころアパート」を「居住サポート住宅」制度に対応させ、さらにその拡大展開として「まごころヴィレッジ」「まごころリノベアパート」等を創るプロジェクトを開始しました。

 

 この連携に、地域の料理上手なシニア世代が、地域に美味しい食体験を提供する事業「ジーバーFOOD」を展開する株式会社ジーバー(本社:宮城県仙台市、代表取締役:永野 健太、以下、ジーバー)も加わり、三社連携の始まりの会として「まごころアパート」連携プロジェクト・キックオフイベントを7月11日(木)に開催いたしました。イベントダイジェスト(2)をお届けいたします!

 

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イベント動画は近日公開予定

 

 

◆ 離れて暮らすご家族や地域をつなぐ、Wi-Fiセンシングの可能性

(上原)

 みなさん、こんにちは。ご紹介にあずかりました株式会社おきでんCplusCの上原です。ここまでのお話の中に「Wi-Fiセンシング」というキーワードが出てきましたが、まずはこれが何なのかをご紹介しますね。

 

 パソコンやスマホをインターネットにつなぐ時、あちこちに飛んでいるWi-Fi電波をつかまえますよね。Wi-FiセンシングとはWi-Fi電波を使って、お部屋の中の人の動きや睡眠の状況を検出できる世界最先端の技術です。

 

 おきでんCplusCは、Wi-Fiセンシング技術を開発した Origin Wireless Inc. というアメリカの会社と6年ほど前から協業して、高齢化している日本社会の福祉分野へこの技術を応用するよう取り組んで参りました。

 

 デバイスはシンガポールに本社がある nami.ai Pte. Ltd が開発。プラグ&プレイの簡単Wi-Fiセンシング機器です。活動センサーのデバイスは小さなコンセント型で、リビングや洗面所に設置します。睡眠センサーは丸い形をしていてベッドの枕元、寝室に設置します。どちらも大掛かりな工事は不要。壁などのコンセントに差し込んだら、簡単な設定ですぐに使えます。

 

(上原)

 Wi-Fiセンシングって、高齢者がそのデバイスの前を通り過ぎた時だけ動きを検知する技術では無いんです。Wi-Fi電波はお部屋の中で反射しながら横方向だけでなく縦方向にも広がります。ぐるっと360度の空間の広がりの中で活動状況、睡眠状況、さらには転倒検知、生存確認ができるんです。

 

 そのようにデバイスで取得した24時間365日の屋内活動・睡眠データを分かりやすく見える化する「やさしいみまもりアプリ」を開発しました。私の母は76歳、沖縄県の石垣島で一人暮らしをしていますが、この画像は母の1週間の生活をWi-Fiセンシングでみまもって、取得したデータをアプリに表示したものです。オレンジ色が活動データ、青色が睡眠データを示しています。

 

 離れて暮らす息子としてはアプリを見て「ああ、オレンジ色が続いて昼間はよく活動しているな、いつもの時間に就寝しているな」と安心できる。青色が夜中に途切れて起きていることが二日くらい続くと息子としては心配になる。こどもたちと一緒に「おばあちゃん」にLINEしたり、気遣いの電話をしたりなど、活動・睡眠変化を踏まえたコミュニケーションをとることができるようになるんです。

 

(上原)

 おきでんCplusCは令和4年度、令和5年度に続いて、沖縄県「令和6年度離島・過疎地域づくりDX促進事業(高齢者等のみまもり支援事業)」に今年度も採択され、MIKAWAYA21のみなさんと協業しています。

 

 この事業の一環として、公営住宅にWi-Fiセンシングを導入したことがありました。お年を召していて身寄りのない方々がいらっしゃいましたが、このスマホのアプリを使って、「私はあなたをみまもります、あなたは私をみまもってください」という、高齢者同士の自発的な「共助」が生まれました。地域がつながっていく。こんなうれしい使い方をしてくださるとは我々も想定外。大変勉強になりました。

 

 もうひとつは、沖縄北部の東村での実証実験の事例。もともとは約20の高齢者世帯を区長さんがおひとりで、1世帯ずつみまもり訪問をされていましたが、その全てにWi-Fiセンシングを導入しました。

 

 それまで区長さんは「気にはなるけれど、毎日全世帯には訪問できない」というジレンマに悩んでいらっしゃいました。でもWi-Fiセンシング導入後は、公民館にいながらにして、タブレットから「ああ、みんな元気に活動している、大丈夫だ」ということが分かる。気がかりなデータが取れた時は、「ちょっといつもと違って様子がおかしいから、訪問して顔を見て行こう」と効率的、効果的なみまもりが行えるようになりました。

 

(上原)

 そして本日(2024年7月11日)プレスリリースいたしましたが、おきでんCplusCと大宜味村は高齢者のみまもり支援事業に関する協定を締結しました。村内にモデル地区を3か所ほど設置し、地区内すべての(100%)高齢者宅を対象としたみまもり体制を構築するものです。基本は自助、そして地域住民がつながる共助、最後はしっかり公助がまわるような社会システムを構築していきます。

 

 カメラもマイクもウェアラブルも不要な、最先端のWi-Fiセンシング技術を使うことで、地域関係者は平時から高齢者宅の状況をプライバシーに配慮しながら確認可能になります。災害時には家の中にいる、いないといった情報が避難支援に活用できるでしょう。

 

 また、一定時間活動・睡眠が検知されない場合には、孤独死放置可能性をいち早く家族・地域関係者・自治体等へエスカレーションする機能がありますから、これまで随時対応が大きな負担となっていた自治体・公的機関等の負担軽減にも貢献するでしょう。

 

(青木)

 上原さん、ありがとうございました。自治体・公的機関に加えて、不動産管理会社や大家さんの負担軽減にも貢献できますね。東京都の自宅住居で亡くなった単身世帯者の統計※によると、お亡くなりになった後に2週間以上気が付いてもらえない方が男性では約3割いらっしゃる。3人におひとりという確率で発見されない方々が、「まごころアパート」に導入するWi-Fiセンシングの技術とデバイスによって、ゼロに近づけられるかもしれません。

※東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和2年)

 

 さあ、こうしたハードに加えて大切なのが、まごころアパートに入居してくださるシニアがワクワク毎日暮らせるかというソフトの面だと思います。ここからは、株式会社ジーバーの永野さんに「ジーバーFOOD」の取組について語っていただきましょう。

 

◆ シニアがワクワクする「おしごと」、生きがい創造事業。

 

(永野)

 こんにちは、株式会社ジーバーの永野です。「ジーバーFOOD」は2022年11月に仙台でスタートしました。どこにでもあるような商店街の空きテナント。これを地域のために有効活用してほしいというお話を宮城県仙台市太白区長町・長町商店街連合会の会長さんからいただいたことが始まりです。

 

 シニア、企業、地域のためになるような事業をやりたいなと考えていたら、ちょうどその時に青木さんの「まごころサポート」と出会いました。僕の本業は不動産業なんですけど「株式会社ユカリエ」としてまごころサポートに加盟しました。シニア世帯の生活支援をするうちに、次第に地域のシニアのみなさんが集まるようになりました。

 

(永野)

 当時、試験的に地域の野菜販売もしていたんです。すると、お会いするシニアの方々が想像していたよりもずっと元気なことに気が付きました。シニアってたくさんサポートしてほしいのかなって思っていたらそうでもなくて。「もっと自分たちのパワーを活かしたい」「年はとったけど新しいことにチャレンジしたい」という想いをみなさん持っていらっしゃる。

 

 おひとりおとりの元気な力を地域の、社会の力に変えていく。そんな環境や仕組みが高齢化していく日本にはまだまだ足りなくて、必要だと考えてジーバーFOODを立ち上げました。

 

 地元の新聞販売店さんの力をお借りして広告を出すと、毎回20人近くの方が自分も仲間になりたいと「おしごと説明会」に参加してくださるんです。飲食店経営者の方にお話しするとみなさんびっくりされます。「え!この時代にそんなに集まるの?」って。

 

 僕たちは「仕事」を斡旋するのではなく、シニアの「おしごと」を創出したい。お金のために嫌なことを我慢して働き続けるのではなく。好きなことや得意なことを活かして、人の役に立つことで「ありがとう」の言葉と一緒にお金を得ていただきたい。だから、募集チラシには時給情報は一切書いてないんです。すると「自分にできることがあれば」、「地域の役に立ちたい」と魅力的な方々が集まってくださるんです。

 

 もちろん、人が集まるとちょっとしたいざこざはつきものです。ロッカールームであんなこと言われちゃったよとか(笑)でも、そこも含めてコミュニティが活性化しているんですね。その日にドアを開けて出かける場所と用事があって、ワクワク心が動いて、みるみる顔色が明るくなっていくんです。

 

※資料提供:株式会社ジーバー。宮城県富谷市が所有する施設運営をジーバーFOODに委託決定。宮城県多賀城市では公園利活用事業の飲食スペース運営をジーバーFOODに委託決定。仙台を代表する⽼舗洋⾷店「レストランHACHI」の “⽇本⼀のナポリタン”の仕込みを、地域のジーちゃんバーちゃんがお⼿伝いする「本当に美味しい応援隊」もスタート。長野市や三島市など仙台以外の地域でもジーバーFOODがスタートしている。 

 

◆ 食が人をつなぐ。アパート内コミュニティキッチンの可能性

 

(青木)

 永野さんは、不動産事業者でもいらっしゃいます。プロの目で見た時、「おしごと付きアパート」って斬新でしょうか?

 

(永野)

 先ほど平川さんが仰ったように「食事」は人と人を繋ぐ一番の場だと思います。でも、食事付きアパートを作ろうとなった時にこの人手不足の時代に誰が食事を作るかがいつも課題になる。いろいろな自治体とお話をさせていただきますがいつもこの課題が出てくる。

 

 そんな時、ジーバーFOODを「まごころアパート」内のコミュニティキッチンで展開するとどうでしょう。アパートに住んでいるシニアや近所のシニアが集まって、一緒におかずづくり、お弁当づくりをする。

 

 ひとりでさびしいおじいちゃんもおばあちゃんも、みんなでわいわい食事をする。単身高齢世帯が増えて行くこれからの時代に、おしごと付きのまごころアパートは、斬新かつ必要不可欠と考えます。

 

(青木)

 永野さんには第2部でもたくさんエピソードを語っていただきましょう。

 さて、まごころアパート事業を拡大していくうえで、建築系や不動産系事業者のみなさんに仲間になっていただくことが大切と考えています。そのお立場で、藤井さんにまごころアパートの可能性を、福田さんには資金調達の仕組みづくりについてお話しいただきましょう。

 

◆ 街の未来を建築系、不動産系事業者のみなさんと共に創る

 

(藤井)

 株式会社物件王、株式会社ここいえの藤井です。アパートって40年位前から資産活用の手法として全国にどんどん建てられました。もちろんそれまでも長屋のようなものはありましたが、普及が加速していった。

 

 そして今それが老朽化してきて、退去者も増えてきて。子供や孫に相続させようという話になっても、別にほしくないと。サラリーマンだし、この際もう手放してしまいたいという方々がたくさんいらっしゃる。そうすると、空き家と一緒で空きアパートが増えてくる。アパートって面積が大きいので廃墟化した時の周辺住宅地への影響も大きい。

 

 

(藤井)
 そうした課題解決のひとつの方法として、コンセプトアパートという形でシニア向けの住まいを提供できる。若者に出会いたいけれど、話し相手がシニアしかいない方々が集まり、コミュニティが形成される。昔の古い建物が生き返って、また使われるようになる。確かに耐震の性能をあげていかなくてはならない等の課題はあるかもしれない。でも新築ほどの大きな費用が生じる訳ではありません。

 

 まごころアパートを普及させるには、全国どこにでも相談に乗ってくれる建築や不動産の専門家がいることが重要。ひとり、ふたりじゃなくて。たくさんの仲間がスクラムを組んで「よし、こういう世の中にしていくぞ、やるぞ!」と力を合わせることが大切です。

 

(青木)

 率直に申し上げると、新築で建てる今までのビジネスモデルの方がラクですよね。でもまごころアパート事業については、志というか、街の未来をどうしていくかということに共感してくださる建築系、不動産系事業者の方が重要になってくると思います。

 

(藤井)

 もちろん志も大事です。ただ、コロナっていう予想外のことが起きた。建築業界ではコロナ前と比較して60%売り上げダウンしている事業者さんがたくさんおられ、事業継続を断念された方もいらっしゃる。少子高齢化で事業承継上の問題から断念された方もいらっしゃる。閉塞感の漂う状況。

 

 一方で、これから単身高齢世帯は確実に増えていきます。売り上げを立てる、そして社会貢献もしていく。この両立を僕はまごころアパートに期待しています。

 

◆ 「まごころ地域住宅FUNDプロジェクト(仮称)」による資金調達

 

(青木)

 では、資金調達の面においてどのような仕組みが可能か、お金のプロである株式会社エンジョイワークスの福田さんにうかがいましょう!

 

(福田)

 僕、お金のプロってことになっているんですね(笑) 参加者のみなさんは、まごころアパート事業が、共助、相互扶助、共創、ネットワーク、コミュニティという文脈のお話だと掴んでいただけたと思います。まごころアパートのコンセプトって良いよね、このアパート増やしていきたいよねと言う時、青木さんのおっしゃるとおり「お金どうする?」というお話になります。

 

 先ほど藤井さんのお話に出てきたアパートオーナーの投資という目線では、数字が合えば銀行からお金を借りて進めていくこともできるでしょう。一方でこれからは、個人もしくは法人のバランスシートに頼った資金調達だけではなく、みんなでお金を出し合って、創り上げて、守っていく。そこから得られるキャッシュフローはみんなでシェアするというやり方もいいんじゃないかなと。

 

 そして実はお金の話だけではないと思うんです。実際にお金を出すことによってこの事業と関係性が生まれる。また、お金を出し合った人同士にも関係性が生まれる。
若い人だっていずれシニアになりますから、自分の将来が自分ごとになるということにもなる。そういう観点ではお金の話であるし、お金を出し合うことでの関係性の話でもある。ファンドという手段を考えるのもアリだと思うんです。

 

 

(青木)

 福田さんって、利回りだけで考えるのではなくて、何度もワークショップを開いてバーベキューやって。大切にしていることに共感しあうメンバーが集まってプロジェクトを立ち上げる。そんなお金の集め方をしていらっしゃる。まごころアパートの可能性をどうお考えになりますか。

 

(福田)

 今のシニアが、そして将来のシニアである今の若い方が、本当に必要と思うかということだと思うんです。「Wi-Fiセンシングでみまもってもらえる。すごくいいよね、安心だよね」「ジーバーFOODのおしごとコミュニティで自分の人生が豊かになるよね」って思えるかどうか。

 

 みんながそう思えれば、共感を呼ぶものになって、みんなで創り上げて行こうとなるし、お金も出していきましょうとなるでしょう。

 

◆ 次世代に希望をつなぐまちづくり

 

(青木)

 平川さん、この二年間くらいずっと、みんなの共感を呼ぶキーワードを考え続け、パズルのように組み合わせてこられましたが、今日こうやってキックオフイベントを開催することができました。

 

(平川)

 もともとは妻の実家の相続の問題がありました。その土地建物は売る予定でした。だけど義理の父が親から受け継いで、40~50年住んできたところを売り払って相続しやすくするということは選ばなかったんです。銀行との話し合いが途中まで進んじゃってたから、方向転換はちょっと大変だったんですが(笑)

 

 でもやっぱり、長く住んだ場所と、そこでの人との関係を次世代に引き継いでいきたいという義理の父の想いにどう応えられるかを考えることにしたんです。

 

 そんなこともありながら、2年近くまごころアパートの事業構想をしていたら、住宅セーフティネット法の改正があって、居住サポート住宅制度が創設されることになって。やりたいことがやれそうな環境になってきた。自分たちのサービスが世の中に必要とされるものであれば、その流れに乗るということで本日、ご披露の場を設けさせていただきました。

 

 シニアが元気じゃない国は希望が無い。我々50代は25年後にどう暮らしているでしょうか。子供や孫たちは未来に希望を持てるでしょうか。シニアがコミュニティに参加して幸せに暮らしていれば、幸せな若い世代の暮らしもそこにあるはず。我々50代こそがこの事業にしっかり取り組んでいきたい、そんな意気込みでここにいます。

 

(青木)

 本日はたくさんの方にご参加いただきありがとうございました。みなさまと力を合わせて、持続可能なまちづくりを目指したい。このまごころアパートプロジェクトに、たくさんの方のご参画をお待ちしております。

 

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